CARRE/Jacket

織りと染色の技術が可能にしたスカーフのように羽織れるジャケット

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シャツのように一枚の生地で仕立てられた軽やかなジャケット。生地にはシボ感があり、夏でもジャケットの着用が求められるシーンで活躍します。2019年の春夏ものの中で、23区HOMMEとしての新しい試みがキャレです。キャレとはフランス語で正方形という意味。どのような背景から生まれたのか、デザイナーを務める小林圭介に話を聞きました。「サルトリア23のときと同様で、軽くて機能的でウォッシャブルな素材を選ぼうとすると、どうしてもポリエステルなどの合成繊維になってしまいます。しかし、23区HOMMEとしてはできるだけ天然素材をベースにしたいという思いがある。そして、こうした機能的な素材を使った自分が着たいと思えるものってどんなアイテムだろうって想像したときに、たまたま出会ったのがこの生地だったのです」

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生地をよく見てみるとシアサッカーのような凹凸があり、独特の風合いが感じられます。この生地を構成するメインの素材はキュプラ。綿花を採取した後に残る、種子の周りに付着しているコットンリンターと呼ばれる短い繊維が原料です。これを酸化銅アンモニア溶液に溶かして、再生繊維として蘇らせたものがキュプラで、天然原料なのでその特性を活かしたものづくりができるのが特徴です。見た目や肌触りはシルクにそっくりで、特徴においてもドレープが美しいといった共通点がいくつもあります。キュプラは軽量でシワになりにくく、吸放湿性や接触冷感性に優れ、かつ家庭で洗うことが可能。上質なスーツの裏地によく使われていることからも分かるように、すべりもよくさらっと着用することができます。

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「この生地を見つけたときに最初に思ったのが、シルクのスカーフを首に巻いたときのあの心地いい感覚。23区HOMMEでもこれまでにシャツの首元をスカーフで巻く着こなしを提案したことがあり、それならいっそのことスカーフをジャケットのようにして身につけられないだろうかという発想に行きつきました」と、キャレのコンセプトを話します。ヨーロッパでは正方形という意味が転じてスカーフのことを指すことからキャレと命名。採用した生地は4種類あり、3色あるギンガムチェックはキュプラが60%くらいの高混率のもの、ブラックウオッチはキュプラが低混率のものです。キュプラのほか、ナイロンとポリエステルが混紡された三者混。ちなみにキャレとは生地の名称やアイテム名ではなく、ニックネームのようなものとして名付けました。

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このキャレの生地には大きな特徴があります。それは3重ビームで織られた米沢織であること。山形県の米沢は古くからシルクの産地と知られ、ジャカード織りやドビー織りといった柄のある織物を得意としています。ビームとは経糸が巻かれた大きなボビンのようなもので、キュプラとナイロン、ポリエステルのそれぞれの経糸が巻かれた3つのビームを使って織られます。「他の織物の産地だと、1つのビームにキュプラもナイロンもポリエステルも一緒にするところを、3つのビームに分けています。そうすることでそれぞれの経糸のテンションを微妙に変えて織ることができるからです。その結果、凹凸のある独特の風合いの生地になるのです」と、3重ビームで織ることの利点を説明してくれました。

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また、染色にしてもキュプラとナイロン、ポリエステルのそれぞれを異なる3つの方法で染めているのも特徴の一つ。高度な技術が必要となり、世界中を探してもこのような染色方法はなかなか見当たりません。「同じネイビーに染めても素材と染色方法が違うため、コントラストによって表情に大きな差が出てきます。つまり、これは米沢織の織りと染色の技術が融合して誕生した特別な素材感を持つ生地。3Dファブリックともいえるのではないでしょうか。ポリエステルによるイミテーションの生地が増えているなか、天然原料からつくられるキュプラをメインとしたこの生地を打ち出していくという姿勢は、23区HOMMEにとってとても重要なことなのではないかと思っています」

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この生地をスカーフのように羽織れるジャケットに仕立てたのが23区HOMMEならではのこだわり。副資材はもちろん、袖にも身頃にも裏地がありませんが、テーラード仕立てのため、ビジネスなどの重要なシーンでも活躍してくれます。ここで、コーディネートのポイントを小林に聞いてみました。「ジャケットが柄ものなので、インナーにはリネン100%のベーシックな無地のシャツが合います。もう一つの選択肢は、今季の23区HOMMEではポロシャツを9色展開していて、その中でもジャケットに合わせられるカラーを強化しているので、こうしたカラーのポロシャツを合わせると大人っぽくシックに着こなすことができます。ボトムスはデニムのようなリネンパンツがおすすめですが、トップスのベーシックな組み合わせに対してアクセントを付けたい場合はカーゴパンツでも相性がよいと思います」

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天然由来の素材を使い、夏でも快適に着られるアイテムを目指して誕生したキャレ。これまでは盛夏に向けた柄ものをつくろうとすると、どうしてもプリントやイミテーションの素材を使わざるを得なかったため、キャレが生み出す柄や豊かな風合いはとても価値のあるものになりました。今季はジャケット1型のみの展開ですが、さらなるアイテムにも期待したいところです。

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Jacket / JKNSKM0403 / ¥42,120(税込) ONLINE STORE

米沢織とは山形県米沢市とその周辺でつくられる織物のこと。江戸時代後期、経済的に苦しかった米沢藩が財政を建て直すために織物の振興に力を入れ始めたのが始まりとされています。養蚕業が推奨されたため絹織物の産地としても発展し、同時に植物染料による染色の技術も向上しました。大正時代には全国に先駆けて米沢でレーヨンの生産が開始され、やがて合成繊維の服が一般的になる昭和に入ると、合成繊維の生産でも知られるようになりました。現在でもさまざまな織物のほか、ドレス用の高級生地や男性用袴などの生産地としても有名。2007年には特許庁より地域団体商標として米沢織が認可されました。

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